NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発で有名な、お茶の水大学名誉教授、内田伸子先生の論文、教育社会学研究第100集「学力格差は幼児期から始まるか?」~経済格差を超える要因の検討~のなかに、興味深い記載がありましたので紹介します。
これは、2012年に東京、ソウル、上海の3~5歳児1000名、合わせて3000名に個別の臨床面接調査を行った結果をまとめた表です。壮大な研究ですね。内田先生によると、「子どもの語彙力について、幼稚園と保育園による違いは、調査の結果認められませんでした。しかし、自由保育か一斉保育かでは、明らかな違いがみられました。自由保育、子ども中心の保育、自由遊びの時間が長い保育所の子どもの語彙力が高かったのです。」という結論でした。
内田先生は、どうしてこの論文を発表したのでしょうか?それは、2010年7月に当時の文部科学省幼稚園課が、「幼稚園卒の子どもは、保育所卒の子どもよりも成績が高い」と発表したことへのアンチテーゼのようです。私も当時、この文科省の結論は腑に落ちなかったことを思い出しました。
さて、この表から、「読みと書き」については、幼稚園・保育園・自由保育・一斉保育の差はないということを読み取ることもできます。これは、個人的には驚きでした。あくまでも語彙の多さについてのみ、差があったということなのですね。これについて内田先生は、別の論文で「50の文字を覚えるよりも100のなんだろ?を育てたい」と進言しています。「50の文字を覚える」は読み書きすることを表し、「100のなんだろ?」は語彙を増やす具体的な活動を表していると思います。「なんだろ?」は語彙力に直結し、語彙力と学力は密接な相関関係があるということですね。
さくらそう保育園の自由遊びや、それぞれのご家庭での団らんの中で、「なんだろ?」と感じる場面にたくさん遭遇し、その子なりの答えを見つけ、その答えを喜びの中で保育士と共有していくことで、学力がついていったらと思います。
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