「2階のトイレから水漏れがする」という情報を受け、私は翌日の朝早く、そのトイレを点検しました。どうやらネジの締め付けが甘いようで、パッキン付近から水が沁み出ています。太い水道管の太いネジを回す工具は手持ちに無く、とりあえず力任せにネジを素手で締めていると、朝早くから登園してきて、その様子を心配そうに見つめていたHちゃんが一言...
「おトイレ・・・きげんわるいの?」
トイレの調子が悪いとは言いますが、機嫌が悪いとは、なんて素敵な表現なのでしょう!まるで、トイレに人格があるようです。人格があるからこそ、機嫌が悪いこともあるよね。トイレにも、尊厳の気持ちをもって接してあげましょう。「トイレの神さま」という歌もありますしね...。そんなことを連想させてくれました。
朝、保育室に入る前に、必ずスタッフルーム(職員室)に寄って、私やままさんに甘えてから、保育室での生活に入ることをルーティーンにしているお子さんが何名かいます。(必ず寄って甘えることで、心を落ち着かせられる場があるという意味では、スタッフルームも結構役に立っているようです。)そんなお子さんのひとり、Yちゃんが、ある朝、自分の右足の薬指と小指の間を気にして、ボリボリと掻いています。見ると、皮膚の皮が一部分剥がれているのです。すると、Yちゃんは、皮膚の剥がれたところを私に見せながら...
「ねえ、ぱぱさん」
「何?」と私、真顔のYちゃんは、
「Yねえ、おとなになってきたみたい」
そしてかすかに笑いました。
たぶん、Yちゃんのお家では、大人の誰かが同じようになっていて、それを掻いているのを見ているので、今度は自分が同じ状況になった時に、思わず出てきたセリフなのでしょうね。大人になるってことは、パッと何か見えないものが見えてくるとか、出来ないものが出来るようになるといった、右肩上がりの出来事だけでなく、見えないけどやるしかないとか、割り切れないけど受け入れるしかないといった、言わば右肩下がりの側面もありますよね。そのようなほろ苦いことでも、よしとしようといった意思は、正に大人なのではないかと思いますが、Yちゃんは自分の身に起きた現実を、迷いの中で受け入れるという「大人の境地」を垣間見たのでしょうか。いずれにせよ、「大人になるって、どういうこと?」という、若人なら誰でも悩む命題に対して、非常にユニークな切り口で、鮮やかに真実を表現してくれたYちゃんに脱帽です。(ちなみに、後日受診したところ、単なる皮膚炎だったということが判明しました。ミ○ム○じゃなくて、良かったね。)
保育園って、こんなに面白いところなんですよ!
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。