最近、自殺をする若者のニュースがたびたび報じられ、心が痛いです。逆境時の耐性に乏しい人が増えているのですね。きっと、子ども時代に「失敗を許される体験」を十分にしてこなかったのでしょう。
漫画家の山田玲司さんは、著書「非属の才能」(光文社新書)の中で、次のように述べています。「(大人たちは、その乏しい体験から)人生には、いたるところに穴がある。私は、いっぱい落ちた。だから、お前には落ちて欲しくない。」子どもには、自分のように失敗した人生を歩ませないため、先回りして穴を埋め、しまいには「お父さんは、人生を全部先送りにしてきたんだ。だから、お前も最後まで先送りにして逃げろ。運が良ければ、逃げ切れるぞ。社会っていうのは、そういうもんだ。厳しいんだ。穴があったら、迷わず遠回りして行け。」
でも、そのように生きてしまうと、先送りで「負け知らずの人生」を歩むことになりますから、ちょっとした失敗ですぐに挫折し、「もうだめだ」となってしまいます。結局、穴との付き合い方は、穴に落ちてみなければわからないものなのです。
山田さんは、「親が本当に子どもにすべきことは、子どもの失敗やいたずらを容認することだ。」と考えておられるようです。「ミルクをこぼしただけで、鬼のように子どもを叱るお母さんがいる。もしかしたら、その子は上手く飲むための試行錯誤をしていたのかもしれないのに・・・。でも、お母さんは、問答無用でひっぱたいたりする。もしかしたら、そのとき、その子どもは空想の宇宙船で銀河を旅している最中だったのかもしれないのだ・・・。この時期に子どもの失敗を容認するということは、実は巨大な先行投資になるのだ。」家じゅうの調味料をひっくり返し、全ての化粧品をぶちまけている我が子に、「あなたは今、どんな旅にでているの?」と笑いながら聞いてみて欲しいものです。
「ふざけないで!大切な物を台無しにして、ダメなものはダメだと教えるのが大人の役目です。」と言いたい気持ちも分からなくはないですが、それはともかく横に置いておいて、子どもの言い分を寛容な姿勢で聞くことによる効果を、冷静に考えていただきたいと思います。「高価な化粧品や、キャビアの瓶詰めよりも、あなたの挑戦に価値がある」というメッセージは、生涯にわたって子どもを支え、「失敗に負けない心」を作るのです。
山田さん自身、ミルクをこぼしても鬼に怒られたことが無い、セロテープを一本丸ごと使って「セロテープ遊園地」を作っても、ベートーベンのLP版レコードをひっかいて傷をつけても、鬼は出てこなかったと述べています。それどころか、いつでも落書きができるように、壁に大きな模造紙を貼るという周到さで、家族は山田さんの試行錯誤を歓迎してくれたのだそうです。おかげで、山田さんは、何回連載を打ち切られようが、ブログが炎上しようが、平気でやりたいことを続けていられるそうです。
保育園でも、子ども自身や相手を傷つける場面を除き、その失敗を許す余裕があったらと思います。また、子どもがやりたいと思ったときに、やりたいことができる環境の準備を怠らないでいられたらいいなと思います。「子どもの未来は、大人が子どもの失敗をどれだけ許せるかで決まる」のですから。
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